2009年12月22日

豊郷小学校保存運動の記録を読む その2

 古川博康・本田清春著『近江商人 古川鉄治郎とW・メレル・ヴォーリズ 歴史と文化薫る学び舎 豊郷小学校 校舎保存運動の記録-豊郷小学校問題の全貌-』を読んで、少し前に日夏ヴォーリズ建築の保存について、船寄俊雄氏の文を借用して考えてみました。

豊郷小学校保存運動の記録を読む その2

 今回は、豊郷小学校卒業生で、この保存運動の中心となって居られた本田清春氏の文「豊郷小学校の原風景と地域文化」についても、勝手ながら引いておきたいと思います。

 「なぜそこまでして、豊郷小学校の校舎・校庭を守ろうとするのですか。」という質問に対する答えとして、
 「豊郷小学校への強い愛着があるとともに、
  私たち郷土の歴史がこの小学校には詰まっているから」
 「今を生きるものはこれから生きるものへ、この歴史を受け継ぐ使命をもっているから」

 「校舎が、地域の人々の歴史と深く結びついてきた歴史をもっているとき、校舎は単なる校舎ではなく歴史の生き証人としての性格を持ったものとして現れてくる。これを豊郷小学校校舎の保存運動は訴えた」
 古川鉄治郎翁への尊敬があり、「豊郷に生きてきた人々の「豊郷の誇りある歴史」を含みこんだ豊郷小学校像のひとつは、近江商人としての価値観に触れることのできる校舎だったのであろう。」

 宮本憲一氏「足もとから維持可能な社会」講演で、マンフォード『都市の文化』をテキストにした講演を元にした記述の上で、
「21世紀に入り、私たちはそれぞれの地域のもつ固有性(人間に例えると個性)を生かし、一層高度な文化を作り上げなければならない。地域文化-地域で作り上げられてきた優れた文化や町なみ景観には、人間が豊かな精神生活を送っていける要素が組み込まれているということを改めて考える。より高度な地域文化を実現するためには、住民の豊かな感性と、文化性が求められることは当然だが、しかしそれだけではない。この地域、豊郷での激しい対立をみれば明らかなように、歴史的景観であっても、それをいとも簡単に破壊し、再構成することで生じる権利に集まる者、それは多くは権力を伴って現れるが、その者との対立を引き受け、それを乗り越える静かな覚悟をもったリーダーたちが必要となる。21世紀は、こうした覚悟をもった人びとを生み出す必要性をはらみながら、より高い文化を作り上げていくことになるだろう。
 最後に、”創造的破壊”ではなく、単に古くなったからという理由で、現校舎を公用廃止とし、歴史的景観を破壊してまで、新しい建物を建設するという愚かな町施設のやり方に対して、われわれの保存再生運動-”学校の原風景を取り戻そうとする運動”は、世界の流れに加わり、”より高度な地域文化を構築・形成する”ことを目標にしているのであることを付け加えておく。」と記されている。

 生きた証言として肝に銘じておきたい。


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Posted by 日夏ヴォーリズ建築の会 at 20:00│Comments(0)ヴォーリズ建築
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日夏ヴォーリズ建築の会
フルヨじいさん

 本人はそんなに思っていないが、子どもたちから見ればやはりそのとおりか。

 日夏に生まれ日夏で暮らしてきた。これからも日夏の良さを再発見しながら暮らしていきたいと思う。できれば色々な方々と共に。