2013年08月13日

展示の余韻を楽しむ

 8月3日・4日の二日間、日夏里館で開催していただいた『ヴォーリズさんの設計室展-理想の住まいのつくりかたを読み解く-』では、展示図録を作成いただいたので、その図録によって余韻を楽しんでいるところです。


 展示図録では、前半にこの展覧会が組み立てられていく経過を解説しながら、展示制作をとおして分かったことを整理し、更にヴォーリズさんの住まいの理想について解説。後半は展覧会の展示パネル7枚とヴォーリズ建築事務所のスクラップブックからイングリッシュ様式・コロニアル様式・スパニッシュ様式の解説と適用について解説した5枚のパネルと理想の住宅模型が収録されています。企画制作は神谷悠実さんと指原豊さんで、NPO法人ヴォーリズ建築保存再生運動 一粒の会の発行です。是非一読をお勧めしたい。

 『ヴォーリズさんの設計室展』を企画・制作いただいた神谷悠実さんから、展覧会の図録に参考文献として記されていた神谷さんと富岡義人氏「W.M.ヴォーリズ建築事務所所蔵のスクラップブック「SPANISH」の内容とその設計への適用に関する研究」(『日本建築学会計画系論文集』第665号 2011年7月)をお送りいただきました。


論文は、タイトルにあるように、ヴォーリズ建築事務所所蔵のスクラップブック「SPANISH」の図版出典を1919-1930年の米国建築雑誌に確認し、スクラップブックの編集について検討し、さらに貼付図版のヴォーリズ実作への影響が顕著なものについての指摘がなされています。

 展示パネルでも、「ヴォーリズさんは関東大震災(1923年)以降、火事に強い住宅を作るべきであると言っていて、スタツコ壁を使ったスパニッシュ様式は、ヴォーリズさんにとって非常に合理的なものであったと考えられると指摘されています。

 今回の展覧会のベースとなっているヴォーリズさんの著作が、『吾家の設計』(1923年)と『吾家の設備』(1924年)です。『吾家の設計』は、大正12年(1923年)6月発行のものと12月発行のものでは表紙デザインの住宅が異なっており、関東大震災は大正12年9月1日に発生していました。大震災とも拘わることを考えておくべきようです。

 展示では、台所から設計を始めるヴォーリズの住宅建築は、女性に強く支持されることでしょう。模型を作成された子ども中心の住宅は、大邸宅でした。ヴォーリズさんが考えた小住宅についても考え合わせるとより参考になったように思われます。

 日夏里館へ見学にお見えになった方から、旧日夏村役場・産業組合合同庁舎である日夏里館の解説パネルが無かったことが指摘されていた。今後の課題としたいと思います。




Posted by 日夏ヴォーリズ建築の会 at 22:51 Comments( 1 ) ヴォーリズ建築
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プロフィール
日夏ヴォーリズ建築の会
フルヨじいさん

 本人はそんなに思っていないが、子どもたちから見ればやはりそのとおりか。

 日夏に生まれ日夏で暮らしてきた。これからも日夏の良さを再発見しながら暮らしていきたいと思う。できれば色々な方々と共に。